三郷市から、前田早紀さん(仮名•24歳女性)が腰痛で、お見えになりました。
リハビリテーションの仕事をされていて、毎日クライアントさんをベッドに持ち上げたり、マッサージや回復訓練をされていらっしゃるそうです。
「最近、急激に腰が痛くなってきて……」
それはそうでしょう。腰のバネがまったく見あたりません。
腰は自然なカーブがあるものですが、それが日々の仕事の疲れの積み重ねにより、無くなってしまっているのです。
これでは、何かするたびに腰に負担がかかってしまいます。
そして、体が右に傾いているのを、必死でまんなかに戻そうとしています。
これでは痛くならないのがおかしいというものです。
「相当辛かったでしょう」
つい、私は口に出しました。
「はい、もう最近じゃクシャミをしても痛みがでてきて、体が動けなくなるんです」
うつ伏せになっていただいて、腰の骨を軽く押します。
「痛っ」
と、前田さんの声。
「前田さん、説明しても、よろしいですか」
「はい」
「そのまま楽な姿勢でお聞きになってください。
軽い力で痛みを感じるのは、なかで炎症がおきていると考えられます。
わかりやすく説明しますと、皮膚を切った状態で血が流れているような状態です。
これは回復までに、血が固まって、かさぶたができて、かさぶたがとれて良くなっていきますよね?」
「はい」
「ですから、今日のお体の状態は、整体しても痛みは取れないかも知れません」
「はい」
「しかし、バランスがとれて、腰に負担がかからない状態になりますので、楽にはなっていきます」
「はい」
「そして、痛みが引いた後は、歪んだまま経過するより、ずっと良い腰の状態になっています」
「あぁ、そうなったらいいですね…」
「あと、もうひとつ。仕事中の体の使い方です」
「あ〜、あたし絶対悪い使い方してると思います」
とても心のこもった話し方。
「仕事中、痛みを感じたときがあったのですね?」
「はい………。動けないお年寄りとか、すっごく重いんですよね。痩せて小さいんですけど」
「そうですよね。全部のちからが抜けた人って重いですからね」
この後、重い人を腰に負担のかからない動作で持ち上げる方法をお伝えしました。
これを覚えないと、また同じことの繰り返しになります。
「これをマスターすれば、そうそう腰を痛めることはなくなりますから」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
こうした説明の後に、検査をしました。
まず、両足の曲がり。
左足が曲がりにくいです。
立っているときに、いつも左足に体重が乗っているからです。
次は両手の長さの検査です。
これは、どちらの背中の筋肉が硬くなっているのか、の検査です。
左手が短いので、左の背中に問題があります。
整体施術中、前田さんは、寝返りを打つのも顔をしかめて、声を漏らし、大変そうでした。
整体施術後、両足の曲がりを再検査します。
曲がりにくい左足が、曲がりやすくなりました。
施術後、左足が右足より曲がっていますが、あまりに強い歪みの場合、初回はこのぐらいがいいです。
次に両手の長さの再検査。
これは綺麗にそろいました。
「それでは、ベットから降りて、立ってみてください」
「あ、なんか、最初と違います」
これだけバランスが変わると、わかるはずです。
ただ、なかにはわからない方もいます。
あまりに慢性的に痛みがつづいていると、体の感覚が鈍くなっているからです。
「わかりますか」
「はい、確かに腰は痛いけど、さっきみたいな痛さではないです」
と、前田さんは、笑顔で歩きやすいと続けて言います。
私は、症状が重いので、近いうちに来室することを伝えました。
「はい! あぁ、でもこんなに軽くなったのは久しぶりです」
前田さんは、きっと良くなるはずです。