実はD君がくる前あたりから、心が疲れた方が多く来院されていたのです。
そういった方々を診させていただくたびに、私は体が重く、苦しくなってきたのでした。
(このままではいけない。なにか対策をたてなければ)
そのとき浮かんだは、整体創始者である野口晴哉先生の、
『完全独立した個人』という言葉です。
病気がちな人は依存性が強く、完全独立した個人にならないと本当の意味での健康体にはなれない、そういった意味のことが本に書かれています。
ちなみに野口先生は、晩年施術を辞められたそうです。
それは腕が上がれば上がるほど自己管理しない人が増えるのと、難病の方ばかり増えるから、というのが理由らしいです。
そして何をされたかというと、『活元運動』という自分で自分の体を整体にする方法の普及と、
『 潜 在 意 識 教 育 』
というのを始められたのです。
野口先生の著書を読んでの私の見解ですが、根の深い病気になる人は依存性が高く、潜在意識を変えなくては回復しないというのが理由のようです。
(クライアントさんの潜在意識を変えることができたら、施術が楽になるのではないか)
そう思った私は、すがる思いで整体協会にコンタクトをとりました。
著書には詳しく書かれていませんでしたが、潜在意識教育を学べば、
クライアントさんも私も良い方向にいくのではないか。
面接を受け、活元運動に参加し、運良く整体協会の会員になることができました。
これは面接を担当された方の奥さんが、偶然いや必然私の郷里のご出身だったためでしょうか。
二子多摩川にある整体協会。
それとなく、整体協会で潜在意識教育について誰かくわしい人はいませんかと聞いてまわりました。
教えてくれる方はいませんでした。
当たり前の話です。
この世界は、教えてもらうより、自分でつかみとる世界だからです。
わかっていても聞いてまわったのは、余裕がなかったからでしょう。
いわれたのが、
「我々は、何をしているのかわからないことをやっているのです。感じてください」
感じる。深い言葉です。
今でしたらこの言葉の意味が良くわかります。
が、あの頃の私は実際ひとりの心の疲れたクライアントさんを施術すると背中にだれかおぶさっているような感じが一週間は続いていました。ひとりでこれなので、複数人診たら動くのが大変でした。
(さてどうする?)
整体協会の廊下には、大きな本棚がいくつか並べてあります。
並べられているのは、生前野口先生が読まれた本です。
ドフトエフスキー全集や、芥川龍之介など文学作品のほかに目についたのは、
ある心理学の本でした。
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(つづく)