埼玉県戸田市から、浜田希美(仮名•20歳 女性)さんがお見えになりました。
仕事は中腰で重い物を持つそうです。
その最中に急に腰を痛くして、体を前に倒すことができなくなったとのことです。
そして、近くの接骨院、整体院に通いましたが、
一向によくならないどころか、よけい酷くなったので、
こちらをネットで捜していらしたとのことでした。
( 重い物を持って、か )
当たり前ですが、いくら体を整えて痛みがなくたったとしても、腰に悪い持ち方をすると、また悪くなります。
最初に正しい持ち方を指導することにしました。
どういうフォームで物を持っているのか、をやっていただきました。
もろに、腰に負担がかかる持ち方でした。
さっそくフォームの改善です。
「なかなかむずかしいですね」
最初からうまくできる人はいません。
何回も行えば、やがて体で覚えることでしょう。
フォームのアドバイスをしてから、
次に、他のところで施術を受けて、よけい酷くなったというところに、私は気にかかりました。
どういう施術を受けたのかを聞きました。
「腰の痛いところを何回も押されました」
ちょうど腰の左側の少し上の場所です。
おへその裏側の左。
ここは、急性腰痛のときに、押してはいけない場所です。
「我慢できなかったら、痛いと言って下さいと言われたんですけど、
良くなりたくて、痛くても我慢して言わなかったんです」
「我慢してたんだ………」
気持ちは良くわかります。かつての私もそうでしたから。
「はい」
「良くなりたいものね」
「はい」
そうなんです、心が入った返事。
次に私は、重要な質問をさりげなくしました。
「そこには、何回も通院したの?」
「いいえ。1度きりです。
ちゃんとしたところに行こうと思って、ネットで調べてこちらに来ました」
ここが、ちゃんとしたところかどうかは判断に任せますが、
1度きりというのが、良かったです。
2度行かれたら、かなり酷くなっていたことでしょう。
そうなると、悪い癖ができてしまっている可能性が強くなります。
状態によっては私のつたない整体では回復は難しいので、検査で見込みがなければ、申し訳ありませんが、施術せずにお引き取り願うところでした。
1度ぐらいだったら大丈夫です。
さっそく検査に入ります。
まず施術前の立ち姿勢。
踵の位置と、頭の位置を見ていただければ一目瞭然。
上体が左に傾いています。
これで常に腰が痛いのが正常です。
ときどき重い痛みのある人は慢性の人です。
浜田さんは、常に痛いそうなので、急性の部類でしょう。
急性の方が治りが早いです。
今度は両足の曲がりを検査します。
右が曲がりづらくなっています。
背中の筋肉を触ってみました。
ぎっくり腰になった人に多い、ガチガチの硬さ。
( そうとう酷い。かなり我慢していたに違いないな )
そんな感想を持ちながら、
次は両腕を伸ばしての長さ確認します。
左腕が伸びにくくなっています。
これは、左の腰に問題があると考えられます。
浜田さんの歪みを頭にいれてから、整体施術にとりかかります。
寝返りをうつのも、顔をしかめながらで大変そうです。
( ……この状態で仕事をしていたとは )
整体施術も終盤にさしかかると、
「あぁ、だんだん楽になってきました。さっき寝返りうつのと違います」
と、うれしそうな浜田さんの声が聞こえました。
私も、うれしくなる瞬間です。
「整体を受けて、楽になってきましたね」
「はい」
施術中、何かのきっかけで、動物の話になりました。
浜田さんは猫が好きだそうです。
実は、恥ずかしいんですが、私は、まだ2歳ぐらいのころ、飼っていた猫に子守りをしてもらったことから、猫が好きです。
その猫は私の前にすわって、尻尾を右に左に倒してつかませるように誘導していました。そんな感じで、幼少のころいつも猫と遊んでいました。
現在になっても、猫の力を抜いた無駄の無い動作も観ていて飽きがこなく、道路や公園などで見つけると、ついじっと観てしまいます。
猫の話で盛り上がりました。
話が盛り上がると、人は、緊張した筋肉がゆるみます。
お笑い番組を観る前と後で、ストレッチをするとわかります。
さあ、施術が終わり再検査を行います。
きれいに両足がそろっています。
これで、左右均等に体重がかかっています。
次に、手の長さ。
これもいい感じです。
左の腰•背中の筋肉が左右均等になっている証拠です。
私は、
「立ってみてください」
と、うながしました。
「はい」
と、うれしそうな声。
「楽です。今まで施術をうけて、こんなに軽くなったのは初めてです!」
うれしそうに歩く浜田さん。
私は、水をさすようですが、
「酷く歪んだ状態を脳が記憶しているので、今は楽でも、また左に傾いてきます。
左に傾いているのが正常だと脳が勘違いしているから」
「そういえば、今右に傾いているように思います」
「そうでしょう。そして無意識に左に傾いていきます。
脳が勘違いして元に戻るのです。
元に戻る途中にいらしてください」
と、いって、1週間後、また来室いただくことにしました。
そして、ただしい物の持ち上げ方のレクチャーを繰り返したのでした。